昼休み、昼ごはんを食べ終えた私とカコは未来ブログについての話をしていた。休憩時間にクボスケ、ニッシーと話していたことや、授業中、未来ブログについて考えていたことなど、とかくカコには未来ブログにある現状について話しておく必要があった。
「うーんなるほど、で、未来ブログを更新しないとキョウコがイジメブログとしてホームルームでいうって?
「うん」
「考えすぎ、考えすぎ」
「でも書かれたのが、カコだから」
「うーん、そう考えると、ありかな。昔からあたしのことになると、本気になるからね」
「へえ、そうなんだ」
「……あたしのこと好きなのかな?」
「エエェェェエ!!」
とんでもないことを口走りましたよ、カコさん!
「違う違う。少なくともセレナな関係じゃない」
セレナって……、まさか百合? もう高校二年生なのに!私の妄想は次第に加速していく。
「で、ミキは未来ブログに書くのは誰がいいと思うの?」
カコが大きな声を出したことで、私の頭の中から妄想を取り除かせた。……話の軸は修正した。
「私は未来ブログを理解して、そのとおりにしてくれるヒトがいいな」
「じゃあ、ミキは、未来ブログに書かれた、そのとおりになるブログになるということでいいのかな?」
「うん、そうしないと、キョウコ信じないから」
「いじめブログではないことを証明するために、未来ブログだと証明させる。そのためには、未来ブログに好印象のあるヒトじゃないとダメ」
「うんうん」
「けれど、未来ブログにブログネタにはそれなりのハードルがなきゃいけないし、同じものを二回書いたら意味がない。休みネタは使えないわね」
――こういうときのカコは意外と頭が回る。いつも危ないことを考えているからかなりのリスク回避能力が備わっている。文化祭のゲリラ事件もカコが一番先に逃げたのもその能力のおかげだ。正直、うらやましいスキルである。
でも、ポンポンとアイデアが出てくるカコにも今回ばかりは行き詰っているように見えた。そこで、私はターゲットを選定し、それからブログネタを考えるのがいい、と、助言することにした。
「ねえ、まず、誰が未来ブログに書かれるか絞ってみるのがよくない?」
「うん、じゃあ、……クリにしよう」
「栗林君はダメ!」
私は大声でストップをかける。
「え? どうして? 面白いじゃない? 書きやすいし」
「絶対やらない! やってはいけない! イメージ壊れる!!」
「でも、男は三枚目よ。日ごろ無口で無粋で無表情なクリが未来ブログに書かれたことをするだけでも最高じゃない?」
「あのね、わかっていてるでしょう」
「うん。クリの話になると、ミキは本気にするから」
「もう、で、ホントのところ、誰にするの?」
カコは先に冗談を言ってから、本題を持ちかける。……この前の未来ブログのとき、既に経験済みだ。
カコは私が顔を緩ませて、ゆっくりと首を振る。どうやら、未来ブログに書かれる者は誰かと選定していたようだ。
「ニッシーがいいかな。ミキの話を聞く限り、ニッシーは未来ブログをわかっているみたいだし」
「でも、未来ブログの管理人が色々なことを仕掛けているから、現実になるって言っていた。動かないんじゃない?」
「逆に、動かせるようなことを書いてみたら?」
「え?」
「ニッシーはうちのクラスの中でも代表格の調子ノリで、クラスのカオのひとつでもある。そんなニッシーが未来ブログに書かれた。未来ブログを見ている側から見たら、絶対にやってくれると思っている」
「……カコ、まさか、未来ブログを見ている側の“群集心理”を使うわけ?」
「“群集心理”ってわけじゃないけど、ほら、あるじゃない? あいつならきっとやってくれる。絶対やるっていう“根拠なき期待感”っていうのかな。未来ブログがどれだけクラスに浸透しているのかわからないけど」
「じゃあ、無理かな。まだそんなに広まっていないし」
「あたしに考えがあるわ」
「え?」
「未来ブログの特徴を使った方法が、ね」
そういうと、カコはハニカミながらほほえんだ。わたしはそのほほえみがカコの裏側にあるものだと思うと、少しばかり恐怖する。
けれど、その小悪魔な無邪気さがカコの魅力でもあり、退屈だった私の生活を一変させるほどの力を持っている。そう、カコのアイデアはいつも私や誰かの未来を変える力があったのだ。
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“未来ブログ”は、親友のカコに頼まれて、書くことになった。すると、“未来ブログ”で書いたことが次々と現実で起こるようになってしまった!