――カコが言った工作方法とはこうだ。カコがチェーンメールを送った後、私は未来ブログに匿名のあおりのコメントを書き込む。先にコメントを書いておけば、三つ、四つ、書いておけば、後から書くヒトが増えてくれるとカコがアドバイスしてくれた。
このとき、私はあることに気づいた。ずっと疑問に思っていたのだが、コメントのアラームメールとチェーンメールの時間が逆転していたのはなぜかと思っていた。
本来ならば未来ブログのURLが載ったチェーンメールが先に来て、未来ブログのコメントがありました、というアラートメールが後にないとおかしいはずだった。なぜなら、コメントを書き込むはずのクラスメイトが、未来ブログのアクセス先のあるチェーンメールを見ずに、書き込んでいるはずがない。これは紛れもなく、矛盾である。
しかし、カコが先に未来ブログに書き込みをしたことだとすれば謎は解ける。カコは、未来ブログはみんなに注目されていると自演のコメントを書くことで、みんなにアピールしたわけだ。
自演コメントの力はこれだけではない。私が、未来ブログに自演コメントを書くことで、ニッシーは窮地に立たされた。やりたくないと思っていても、やらないといけないと思い込む。言わば、これは群集心理を応用した、“偽りの群集心理”だ。
本当は一人しか書き込まれていないことも、他の誰かが書いたと思い込む。――工作だろう? と誰かは勘付くが、それを確かめる術はない。
また、これはニッシー個人を狙ったわけではない。クラスメイト全員の心を動かすことにより、ニッシーの心を動かす。……“偽りの群集心理”が、“ホントの群集心理”へと変えさせた瞬間だ。
実際の話、コメントに私以外の書き込みがあった。私のコメントに感化されて、つられて書き込むなんて、これではまるで情報統一されたマスコミみたいだ。
――マスコミが嘘を垂れ流しても、だんだんとその嘘を信じ込み、いつの間にかその嘘がホントになる。
例えば、ある新商品が売れていると放送する。でもそのソース(情報元)はどこにもないが、マスコミは売れてる売れてる、と、配信する。
すると、売れてる、というキャッチコピーに流されて、それを買ってしまうヒトがいる。そしてそんなヒトがいっぱいいるから、いずれ、その売れてるという嘘も、いつの間にかホントになってしまうのだ。
もちろん、マスコミは嘘をつくことはない。ただし、ミスリード、ホントに売れているんだと思わせる書き方で、視聴者を扇動するのだ。
カコはそんなマスコミのアイデアを使った。私が未来ブログを書いた後、カコがチェーンメールを送り、私はその二、三分後、未来ブログにコメントを書いた。
その後、ぞくぞくと未来ブログのコメントが増えていき、このコメントは事実上ホントのコメントへと摩り替わった。
ここで大事なのはチェーンメールを送る前だと、自作自演がバレる。かといって、送った後、すぐ書いたら、バレる。……玲子がコメントを書いたという事実を勘付かないようにするのが、工作行為に大切なことなのだ。
チェーンメールによる未来ブログの更新事実、未来ブログにある名無しのコメント書き込み、この二つが私たちがした工作だ。
これでニッシーは未来ブログに書かれたとおり、“明日の五時限目で、何か面白いことをしないといけない”のだ。
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“未来ブログ”は、親友のカコに頼まれて、書くことになった。すると、“未来ブログ”で書いたことが次々と現実で起こるようになってしまった!